今回は、2022年2月に西武HD・ホテル等の売却先として注目を集めた、シンガポール政府系投資ファンドGIC(ジーアイシー)についてお話しします。
はじめに〜シンガポールの3大機関投資家〜
GIC(ジーアイシー)について解説する前に、まず、シンガポールの3大機関投資家について簡単に紹介します。
※CPF(中央積立基金)を含めて、4大機関投資家と言われることもあります。シンガポールには日本のような年金制度がないため、退職後の生活に備えて貯金することを全てのシンガポール就労者に義務付けしたCPFが存在します。
①シンガポール金融管理庁(MAS)
MASは、シンガポール金融管理局もしくはシンガポール通貨金融庁と呼ばれ、シンガポールの通貨当局、中央銀行にあたる機関です。外為基金の管理や、銀行など金融業に対する監督、通貨制度の維持が主な役割です。1971年に設立されました。
※MAS公式ホームページはこちら
②テマセク・ホールディングス(Temasek Holdings)
テマセク・ホールディングス(Temasek Holdings)は、シンガポールの政府が所有する投資会社(ソブリン・ウェルス・ファンド)です。シンガポール政府保有の株式資産等の運営を行う目的で設立され、シンガポール国内のみならず、中国や日本をはじめ、アジアへの投資を積極的に拡大しています。1974年に設立されました。
※テマセク・ホールディングスの公式ホームページはこちら
③GIC(ジーアイシー)
詳しくは後ほど紹介しますが、GIC(ジーアイシー)は政府の外貨を運用することを目的に設立されたシンガポール政府系投資ファンドで、テマセク・ホールディングスと同じく、海外へも積極的に投資をしています。1981年に設立されました。
※GICの公式ホームページはこちら
ここからは、今回の本題であるシンガポール政府系投資ファンドGIC(ジーアイシー)についてお話します。
シンガポール政府系投資ファンド・GIC(ジーアイシー)のGICは何の略？
GIC(ジーアイシー)とは、Government of Singapore Investment Corporationの略称で、日本語ではシンガポール政府投資公社(シンガポールせいふとうしこうしゃ)と言います。
2013年7月に、GIC(ジーアイシー)は正式名称を“Government of Singapore Investment Corporation Private Limited”から“GIC Private Limited”へ変更しています。
シンガポール政府投資公社・GICとはどんな組織？
GIC(ジーアイシー)は、シンガポールの3大機関投資家の1つであり、GICはシンガポール金融管理局(MAS)やテマセク(Temasek Holdings)と共に、政府系投資会社(シンガポールの政府系ファンド)です。シンガポール政府によって1981年に運用が始まりました。
2022年2月9日時点では、Lim Chow KiatがCEOを務めています。彼のプロフィール詳細について知りたい方は、こちらのページをご覧ください。
GIC(ジーアイシー)は、世界中の金融拠点に事務所を構えており、株、債券、不動産等幅広く扱っています。GICは現在40カ国で投資をしており、10都市にオフィスがあります。
余談にはなりますが、GICは、CBD(ビジネスエリア)の中心、タンジョンパガーのCapital Tower内に本社があります。タンジョンパガーはシンガポール観光ではなかなか行かない場所ですが、気になる方は是非立ち寄ってみてください。Capital Tower内には日系企業もいくつか入っています。
GIC(ジーアイシー)・7つの国際拠点
GIC(ジーアイシー)は、シンガポール以外の国外にも事務所を構えています。ここでは、GICの海外拠点を国別に紹介していきます(7国計10都市)。
- アメリカ
- イギリス
- ブラジル
- インド
- 中国
- 日本
- 韓国
GIC(ジーアイシー)・5つのバリュー
GIC(ジーアイシー)には、大きく5つのValue(バリュー)があります。ここでは、GICの企業バリューを紹介していきます。
- Prudent
- Respect
- Integrity
- Merit
- Excellent
GIC(ジーアイシー)の過去20年間における運用実績
GICの公式サイトを見ると、2001-2021年までの年間毎の投資運用実績が公表されています。
参照：https://report.gic.com.sg/
GIC(ジーアイシー) ・2021年3月時点でのポートフォリオ
2021年3月時点におけるGICのポートフォリオを以下の通りです。
下記の表を見ると、名目債権及び現金のポートフォリオの約4割を占めていることが分かります。
参照：https://report.gic.com.sg/investment-report.htmlGIC(ジーアイシー)・日本への投資ポートフォリオ
GICの公式ページを参照いただければ分かりますが、2021年時点で、GICの日本への投資ポートフォリオは全体の約8%となっています。
【エリア別のGICポートフォリオ】
アメリカ：34%
南米：3%
イギリス：5%
ヨーロッパ(ユーロ圏内)：9%
アフリカ(&ユーロ圏外)：5%
アジア(日本以外)：26%
日本：8%
その他：10%
西武HDが日本国内の約30施設をGICへ売却！
西武ホールディングスが、プリンスホテルやレジャーなど合計約30施設をシンガポールの政府系投資ファンドGICに1500億規模で売却する、という報道が世間を騒がせました。
巷では「また外資系にやられた」「なぜ日本の企業が手を挙げられなかったのか？」と悲痛の叫びも聞こえてきていますが、今後どうなっていくのか注目です。
最後に
ここまで、2022年2月に西武HD・ホテル等の売却先として注目を集めた、シンガポール政府系投資ファンドGIC(ジーアイシー)について紹介してきましたがいかがでしたか。
この記事が少しでも皆さんの役に立っていると幸いです。
